筑波大4年のA代表選手“朝比奈あずさ” 大学進学を選んだ理由とチームが優勝するために必要なこと 【インタビュー2/2】
- Tsukuba owls

- 9月19日
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代表経験や筑波での成長を語った前編。後編では、朝比奈あずさという選手を形づくる“決断”と“責任”にフォーカスする。
無名公立中学校から強豪高校・桜花学園の挑戦、高校卒業後にWリーグではなく筑波大学を選んだ。
今年4年生になる朝比奈は筑波のキャプテンとして掲げる「優勝」という目標。
数々の岐路を自らの意思で選び、進み続けてきた彼女の言葉からは、ブレない覚悟と、競技を超えた学びへの姿勢がにじみ出ていた。
◾️中学までは無名の公立校。そこから桜花学園高校、筑波大学そしてA代表。

――小学生のころから長く競技を続けられていますが、これまでのバスケット生活を振り返ってみて、大きな不安を抱えたことはありますか?
朝比奈:ありましたね。私は中学まではずっと地元の公立学校に通っていました。中学校に進学する際には私立の強豪校からお誘いをいただきましたが、小学生のときにバスケをしてきた子とまた中学で一緒にバスケがしたいという思いのほうが強く、中学はそのまま近くの学校に進学しました。
改めて高校を選ぶときになって、どうしようかと考えたときに桜花学園高校からお声がけをいただきました。この時は不安のほうが大きくて。親元を離れて桜花学園でバスケをするか悩みましたね。
地元でそんなに強くもない中学校から、高校でいきなり日本一の優勝常連校に自分が行くって、、、
もしかしたら3年間全く試合に出られずに卒業する可能性もある。
そんな厳しい環境で自分がやっていけるのか、、、という不安は当然ありました。
でも、考え方をちょっと変えれば気持ちの整理がついて、親元を離れる決断をして桜花学園に行きました。
桜花学園を指導されている井上先生に教わる機会がとても身近になり、同年代のすごい子たちと毎日練習ができる。
それって自分がレベルアップするチャンスになるなと。
――朝比奈選手は現在筑波大学でバスケットボールをされていますが、大学進学の際にはWリーグへ進む道もあったはずです。大学でバスケットをしようと決めた背景にはどのような理由やきっかけがあったのかをお伺いしたいです。
朝比奈:ありがたいことに大学進学の際には、Wリーグのチームからも声をかけていただいていました。
高校卒業後にWリーグで活躍する選手がたくさんいることもわかっていたのですが、自分としてはすぐにトップのWリーグでプレーするよりも、色々な経験を積みたいと考えました。
「一つずつステップアップしていくほうが自分らしい」と思いましたし、
競技を引退した後のことを考えても大学に進学して色々な人に出会い、
色々なことを学び、もっと人としても成長してからWリーグへ、という進路にまとまりましたね。

筑波大学に来て早くも4年目となりましたが、振り返ってみても色々なスポーツが強い大学でありつつ、学業もしっかりしている。
授業等からの学びがあり、交友関係でも色々なスポーツの子たちと友達になれています。
ただバスケをやるだけではなく、
バスケの人たちだけの交流だけではなく、
色んな競技の人と一緒に筑波として戦っている。そんな感覚が持てるのも筑波らしさですかね。
その点からしても、筑波大学に来てよかったなと強く思っています。


◾️筑波女子バスケ部の挑戦 - 日本一を目指すキャプテンの決意
――今年、4年ぶりに桜花学園高校が優勝しました。後輩たちの活躍をどのように受けとめていますか?
朝比奈:本当にすごいと思います。なぜなら私たちの代は、先輩たちがずっと優勝していたので、その道のりを真似することができました。全く同じことを真似する、というよりは先輩たちの「優勝への導き方」を分析して、そこに自分たちの色を加えることで“優勝できるチームづくり”がやりやすかったと思います。
その点でいうと、今の桜花の子たちは優勝が続いていなかった世代だったので、自分たちでその道を切り拓かなければならなかった。だから、ものすごく大変だったと思いますね。
私たちとは違ったやり方でそれ(優勝)を成し遂げた後輩たちはとてもすごいと思っています。
彼女たちが達成したことは、まさに今の筑波女子バスケ部でやらなければいけないことです。
筑波は、今まで日本一になった経験がないメンバーがほとんどで、日本一までの道のりを伝えることも、どこまでスタンダードを上げるべきなのかを共有することも難しい。
ここの道を拓かないことには優勝はないので頑張らなければいけないですね。
そんなことを改めて考えるきっかけになった母校(桜花学園)の優勝でした。
――朝比奈選手は筑波女子バスケ部のキャプテンという大役を務められていますが、優勝に向けてチームをどう引っ張っていますか?

朝比奈:選手たちとコミュニケーションを取ることがすごく大事だと思っているので、コートの内外問わずそこを意識しています。
今までは、コーチ陣とのコミュニケーションがうまくいっていなかったり、仲間同士の仲はいいけど、プレーのことになると静かになってしまったりという課題がありました。
そのため、プレーのことでも喋るように選手同士が集まって話すことを意図的に増やしたり、監督とのコミュニケーションを増やしたりする変化を加えました。また、人に伝えるためにはまず自分がちゃんとできないと響かないと思うので、練習中も自分が一番いい取り組みをすること。その上で思ったことを伝えるように心がけています。
◾️“両立”という強さ
――競技に専念しようとすると、競技だけのことを考えようとする雰囲気に多くのチームがなると思います。ですが筑波大学は勉強も高いレベルでしなければならなかったり、将来のことも真剣に考えないといけない。これは日常的にどういうところで話をされていますか?
朝比奈:普通に練習前のストレッチをしている時などですかね。
「今就活がこうなんだよね」などの話を聞いたりしています。
部活と就活を両立させることは本当に大変ですよね。
――今回のTSUKUBA LIVE!(筑波大学で行うホームゲームの名称)では、親善試合の対戦相手がWリーグ新規参入チームSMBC(三井住友銀行) TOKYO SOLUAさんです。「仕事とスポーツの両立」を掲げているチームと「勉強とスポーツを両立」させている筑波大学との戦いは楽しみですね。
両立という言葉は「筑波らしさ」ともいえる言葉かもしれません。他に「筑波らしさ」を表現することとして、自分たちが「新しいことに取り組んでいこう!」とする文化はありますか?

朝比奈:こういう新しいことをやってみよう!というので、今年から取り入れたことも少しずつあります。例えば、今シーズンの始めに「コミュニケーションを増やしていきたい」と4年生で話合って、試合中に円陣を組んで話すことを増やしました。それから練習後の円陣の後に「全員でハイタッチ」をする、これも新しい取組です。
他にも、バスケットのプレースタイルもどんどん新しいものに変化していっています。
――チームで新しいことに取り組むためには選手たちでの議論も必要だと思います。ミーティングをセットして、みんなでチームのことについて話そうとする時間は設けているのでしょうか?
朝比奈:ミーティングはあります。でも、私たちの部では毎月この日にやるっていうのは決めていなくて、自分たちが必要だと思ったときに4年生だけで話したり、全体に伝えるべき内容は全体でミーティングを行ったり、状況に合わせて行っています。
あとは「バスケットのことはコートの中で!その場で解決しよう!」
とするのが私たちの考え方です。
問題が起こった時にすぐ喋る。伝えきれなかったときは練習後にすぐ話すようにしています。
池田先生が何かを伝えようとしたことに対して、選手たちが疑問に思った部分があるかもしれないと感じたときは、そこは私がすぐに確認するようにしています。

・・・
バスケットボールという競技を通して、朝比奈あずさが築いてきたのは、勝利のための力だけではない。自分で考え、自分で選び、行動する。その力が、彼女を代表へ、そしてキャプテンという重責へと導いてきた。学びと競技を両立させながら、仲間とともに進化を続ける筑波女子バスケ部。その先頭を走る彼女の姿は、きっと多くの人に「自分らしい強さとは何か」を問いかけてくれるはずだ。
【了】
【筑波大学女子バスケ部のイベント概要】
イベント名称:筑波大学ホームゲーム「TSUKUBA LIVE! Presented by SMBC」
開催日時:2025年8月9日(土)13:50開演(14:30 試合開始)
会場:筑波大学中央体育館(〒305-0005 茨城県つくば市天久保3丁目1-1)
対象競技:女子バスケットボール
対戦カード:筑波大学 - SMBC TOKYO SOLUA
主催:筑波大学体育スポーツ局
<当日スケジュール>
13時00分 開場(予定)
13時30分 トークショー
13時50分 開演(予定)
14時30分 試合開始
16時00分 試合終了
<トークショー概要>
時間:13時30分〜13時50分
題目:女性アスリートとデュアルキャリア:「仕事とスポーツ」「学業とスポーツ」の両立
パネリスト:
・髙市 邦仁(SMFG/SMBC社会的価値創造推進部)
・山口 香 (筑波大学体育系教授・元柔道日本代表/ソウルオリンピック銅メダル)
モデレーター:
・大山 高(筑波大学体育系教授・体育スポーツ局スポーツアドミニストレーション部門長)





