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筑波大学女子バスケ部が描く 新しいアスリート像とは

◾️大学女子バスケットボール界に静かな革命が起きている。2024年から筑波大学女子バスケットボール部(以下、筑波女子バスケ部)の新監督に就任した池田英治氏(40)の下、筑波女子バスケ部の輪郭が浮かび上がってきた。

2025年7月に開催されたFISUワールドユニバーシティゲームズ(ドイツ大会)女子ユニバ日本代表チームのアシスタントコーチとして派遣され、帰国後すぐにインタビューをうけた池田英治氏(筑波大学女子バスケ部監督/体育系助教) 【筑波大学体育スポーツ局】
2025年7月に開催されたFISUワールドユニバーシティゲームズ(ドイツ大会)女子ユニバ日本代表チームのアシスタントコーチとして派遣され、帰国後すぐにインタビューをうけた池田英治氏(筑波大学女子バスケ部監督/体育系助教) 【筑波大学体育スポーツ局】


◾️競技の卓越性だけが すべてではない

池田新監督は山口大学を卒業後、筑波大学大学院へ進学。体育教諭志望から学部生時代に「大学教員」の道へと方向転換。指導者としてのチャンスが訪れたのは修士1年のとき。筑波男子バスケ部のコーチとなり、2年時には茨城県立医療大学で助手となる。教員のキャリアがスタートし、男女バスケ部のコーチを兼務することになったのである。


同時期につくば市を拠点にするデイトリックつくば(現Bリーグ茨城ロボッツの前身クラブ)で選手としても活動を始め、その後は東北屈指の強豪チーム山形大学へ転籍し研究者と指導者を続ける。


転機は2021年。


12年ぶりに筑波へ助教で戻り、24年から筑波女子バスケ部の監督に就任する。


「筑波に戻る前の経験がかなり生かされていると思う」

と話す池田氏は筑波女子バスケ部のような強豪チームを率いる以前に多様な現場を見てきた。

「指導者としての経験を積んでいく過程で、さまざまなレベルの選手たちを見ることができたことが貴重な経験として刻み込まれています。自分自身もプロ選手としてプレーしていたこともあって『競技力がすべてだ!』という価値観やその逆も体験してきました」

とアスリートに求められるのは、競技の卓越性だけではないと強調する。


試合中のミーティングで選手たちに指示を出す池田監督 【筑波大学体育スポーツ局】
試合中のミーティングで選手たちに指示を出す池田監督 【筑波大学体育スポーツ局】


◾️自己管理能力の高い アスリートを育成する

池田氏の指導哲学は、従来の指導者像とは大きく異なる。


筑波は国立大学であるため、ほとんどの運動部は推薦枠の選手だけではチームを編成できない。

一般入試で入学した学生を含めた多様な選手たちの潜在能力を引き出すため「バイトを禁止しない」「自由度を高める」といった選手の自主性を徹底的に尊重する方針だ。


勉学とスポーツ。


これらを高いレベルで維持する能力こそが大学でスポーツをする価値であり、未来を切り拓く鍵となると池田氏は語る。


従来の「指導者に管理される」のではなく、タイムマネジメントや栄養面、練習を含め、あらゆる角度から自らを管理できる能力が求められることになる。


選手たちのスキルやフィジカルは十人十色であり、部員全員に横串を入れたドリル(練習)は存在しないと考えているため、ファンダメンタルは重要視しこそすれ、基本的に全体練習の時間は短くしているのが筑波らしさだ。

現役大学生として唯一A代表に選ばれた経験をもつ朝比奈あずさ(体育専門学群4年生)の活躍や毎年インカレで上位に入る戦績が証明しているとおり、練習の拘束時間を短縮させても勝てないチームづくりにはなっていない。

むしろ選手たちの自己管理能力が高まり“バスケでも結果を残す”ために彼女たちは「自主練」や「コソ練」を自ら考え実行し、自分の未来についても考える選手が育っている。


チームの全体練習を短縮化した目的について詳しく話す池田監督 【筑波大学体育スポーツ局】
チームの全体練習を短縮化した目的について詳しく話す池田監督 【筑波大学体育スポーツ局】


◾️多様な可能性を追求する 筑波女子バスケ部の挑戦

女子バスケットボール界は大きな転換期を迎えている。


高校卒業後すぐに女子バスケ界のトップリーグ“Wリーグ”に入る従来モデルから、大学教育と競技の両立を重視するモデルへと移行しつつある。


大学生のオリンピックと呼ばれる「FISUワールドユニバーシティゲームズ」では代表チームのコーチも務める池田氏(後列右端)。大学生世代の日本代表選手たちを指導する方向性と、筑波大学での指導内容を意識的にリンクさせていると話す。 【筑波大学体育スポーツ局】
大学生のオリンピックと呼ばれる「FISUワールドユニバーシティゲームズ」では代表チームのコーチも務める池田氏(後列右端)。大学生世代の日本代表選手たちを指導する方向性と、筑波大学での指導内容を意識的にリンクさせていると話す。 【筑波大学体育スポーツ局】

「Wリーグ全体で見ると既に半分以上の選手が大学バスケを経験した大卒選手になってきている」


こうした中で、筑波女子バスケ部が育む独自の文化が注目を集める。A代表に現役大学生の朝比奈選手が選出されたように、高い自己管理能力を持ち、バスケと学業を高いレベルで両立させる選手が育っている。


「バスケットボールを通じて選手の人生を豊かにすること。競技生活の終了後も彼女たちが自信を持ち、多様な可能性を追求できる環境を創出すること」が池田氏が掲げる目標だ。筑波女子バスケ部の挑戦は、アスリートの未来像を示唆している。


【筑波大学体育スポーツ局】
【筑波大学体育スポーツ局】

●池田氏のロングインタビュー記事は近日中に公開


<了>



【筑波大学女子バスケ部のイベント概要】

イベント名称:筑波大学ホームゲーム「TSUKUBA LIVE! Presented by SMBC」

開催日時:2025年8月9日(土)13:50開演(14:30 試合開始)

会場:筑波大学中央体育館(〒305-0005 茨城県つくば市天久保3丁目1-1)

対象競技:女子バスケットボール

対戦カード:筑波大学 - SMBC TOKYO SOLUA

主催:筑波大学体育スポーツ局


<当日スケジュール>

13時00分 開場(予定)

13時30分 トークショー

13時50分 開演(予定)

14時30分 試合開始

16時00分 試合終了


<トークショー概要>

時間:13時30分〜13時50分 

題目:女性アスリートとデュアルキャリア:「仕事とスポーツ」「学業とスポーツ」の両立

パネリスト:

・髙市 邦仁(SMFG/SMBC社会的価値創造推進部)

・山口 香 (筑波大学体育系教授・元柔道日本代表/ソウルオリンピック銅メダル)

モデレーター:

・大山 高(筑波大学体育系教授・体育スポーツ局スポーツアドミニストレーション部門長)


【筑波大学体育スポーツ局】
【筑波大学体育スポーツ局】

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