意外と知らない「筑波大学剣道部が強い理由」ー 鍋山隆弘教士八段の“伝統を問い続ける”革新的指導哲学とは
- Tsukuba owls

- 9月18日
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剣道の最高位である八段を46歳で取得した筑波大学剣道部の鍋山隆弘監督。
八段審査の合格率は非常に低く、1%前後といわれる。
56歳になった現在も剣を振り続ける現役だ。
今年8月に開催された第67回全国教職員剣道大会(愛知大会)では茨城県代表の大将を務め、団体戦5戦5勝で優勝した。
自己を磨き、単なる技術的完成度ではなく精神的な成熟を重視する強豪筑波大学の名将にフォーカスする。
◾️「正しい剣道」とは何かを常に問い続ける

鍋山監督は、「正しい剣道」という言葉に常に疑問を投げかけている。
この言葉の本質を追求し、伝統的な概念に挑戦的な視点を持つ。
「『正しさとは何か』『伝統とは変化しないものなのか』こういう考え方を持つ指導者たちが筑波には多いと思います。それが筑波大学らしさかもしれません」
スポーツの強豪大学ではあるが、選手たちのほとんどは一般入試組だ。
彼らは「正しさとは何か」を探究し続け、常に批判的かつ創造的なアプローチを取ることが要求されている。
◾️指導者が直接伝える対戦相手の動き

そんな筑波大学の環境下において剣道部が全国屈指の強豪チームを維持できる秘訣の一つは「指導者が対戦相手になれること」だ。
相手の動きを読み、攻めの本質を理解させる。
どのように相手の意図を感じ取るか。
多くの部員たちは直接鍋山監督と戦いながら考え、“考え続ける習慣”を持っている。
「正しい剣道とは何か?」
この問いに対する洞察力はこのような実践から生まれてきているのだろう。
剣道を単なる競技ではなく哲学的営みへと昇華させ、学生の自主性を徹底的に尊重する。
「強くなるのは君たちだ」
という言葉に象徴されるように、学生自身に考えさせ、工夫させる指導法を貫く。
従来の上意下達型の指導スタイルを根本から覆す革新的なアプローチである。

◾️教育者としての使命と人材育成の新しいモデル
筑波大学剣道部の最大の特徴は、その多様性にある。
推薦入試と一般入試の学生が同じ道場で練習を重ねる。
米国ハーバード大学の剣道部員たちが夏休み中に筑波合宿を行っている光景は珍しいことではない。
こうしたオープンな環境が、競技力だけでなく、人間的成長を促進する。
「剣道を通じて人間力を高める」
という鍋山監督の信念は言語と文化の壁を越えて、剣道の普遍的な価値を伝えている。
勝利至上主義ではなく、人間的成長を重視する彼のアプローチは、スポーツ指導の新しいモデルを提示している。
「変化を恐れず、本質を見失わない」
鍋山監督の哲学は剣道という枠を超えて、伝統と革新が見事に融合した新しい教育の形を示唆しているのだろう。
単なる武道の指導を超越し、人間形成の哲学であり、教育の本質に迫る壮大な実践なのだ。次世代を担う人材が自己を磨き、社会に貢献する力を育む…生きた伝統の体現者といえる。
剣道は単なる競技ではなく人間形成の道、自己と向き合う旅路と捉える。剣道という伝統文化に新たな生命を吹き込む旅の案内人として、今日も学生たちと共に歩み続けている。

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